米娯楽王が日本進出を宣言

カジノリゾートが大阪にやってくる?

アジアなどでカジノを中心にホテルや商業施設、会議場を併設した「カジノリゾート」が増加する中、日本への誘致、進出機運が高まってきた。

日本では違法となるカジノだが、橋下徹・大阪市長など複数の自治体が将来的な誘致を表明しているほか、米ラスベガスのカジノ大手も日本進出を宣言。

マカオやシンガポールではカジノリゾートが相次ぎ建設され、観光を中心に経済効果をもたらしているだけに、不況にあえぐ日本にカジノ建設を望む声は今後さらに高まるかもしれない。

 

マカオを変えたカジノリゾート

「マカオをギャンブルからコンベンション(国際会議)や観光中心の都市に変えていく」

9月20日。

マカオにオープンしたホテル「シェラトンマカオ」の開業記者会見で、オーナーでカジノ大手のラスベガス・サンズのシェルドン・アデルソン会長は、自信に満ちた表情でこう述べた。

数年来、マカオ経済の成長を牽引(けんいん)するのは、サンズなどラスベガス資本の企業だ。

マカオでは古くからカジノが認められていたが、2002年に外資系企業が参入以来、大きく変貌(へんぼう)をとげた。

カジノの売上高は、06年にラスベガスを追い抜いて世界一となり、海外からの年間観光客数は2800万人(11年)と日本の4倍以上にのぼる。

ラスベガス系がマカオに持ち込んだのは「統合型リゾート(IR)」と呼ばれるビジネスモデルで、カジノを中心に、ホテルや商業施設、飲食店や会議施設などを併設する。

今回開業したのも、サンズが開発した「サンズ・コタイ・セントラル」というIRで、シェラトンとは競合関係のホテル「コンラッド」や「ホリデイン」も同じ敷地内にある。

投資額は約3600億円。3つのホテルに加えて、2万8千平方メートルのカジノ、100の店舗、レストラン、フィットネスクラブなどもそろう。

なかでも注目されるのが国際会議やイベントを開催できる巨大スペースだ。シェラトンには5千人が収容できる大会場など10タイプの宴会場と、170室の会議室を設置。

ギャンブルから買い物、食事、ビジネスが1つの施設で完結するのがIRの最大の特徴だ。

サンズのアデルソン会長は「コタイ地区は何もない沼地で、『ここにラスベガスを持ってくる』と言うと笑われたが、実現した」と胸を張った。

 

カジノ王が狙う日本市場

アデルソン会長が次に狙うのが日本市場だ。

カジノは世界120カ国以上で認められている。アンデルソン会長は「日本ではギャンブル性が高い娯楽がいくつもあるのに、なぜカジノがないのか。

パチンコとは異なり、IRは観光客や雇用、税収をもたらすメリットがある」と強い口調で話す。

国内でもカジノの経済効果に着目し、誘致を目指す動きは以前からあり、すでに名乗りをあげている自治体も少なくない。

また、超党派議員による法案作成も行われ、提出も間近とみられていたものの、「民主党内で意見がまとまらなかったと聞く。

政権の行方次第かもしれない」と関係者はいう。法整備もクリアしない状況だが、誘致に向けた動きは着々と進んでいる。

大阪府は平成22年に「大阪エンターテインメント都市構想推進検討会」を設置し、有権者も交えて検討を重ねてきた。

ほかにも沖縄や東京、千葉、北海道、福岡・佐賀・長崎で、自治体などが独自に研究や調査を実施。

カジノが解禁されても国内では数カ所に限定されるとみられるため、少しでも優位に進められるよう準備をしておきたいという思惑もあるようだ。

ただ、カジノは人が集まるためのインフラが最重要といわれるだけに、関係者の一人は「東京には成田と羽田、大阪には関西空港があり、両都市が優位」と推測する。

 

最後の壁は地域住民の理解

数年以内の解禁が現実味を帯びてきた日本におけるカジノリゾート。

外国人観光客誘致や税収増による地域振興、震災復興費用の捻出(ねんしゅつ)などが期待されるが、ギャンブル依存などを懸念する声も根強く、地域住民の理解がカジノ解禁の“最後の壁”となる。

誘致合戦においては一歩リードとみられる大阪も、ギャンブルにとどまらないIRの魅力を今後どのように発信し、理解を得るかがカギになる。

一方、海外ではフィリピンやベトナムなどアジア各国だけでなく、スペインやカナダでも、新たなIR建設計画や法改正の動きが相次ぎ、今後は競争激化も懸念される。

日本におけるカジノ導入の成否は、綿密な戦略企画とともに、決断のスピードがきわめて必要となる。(阿部佐知子)

【2012年10月3日 産経新聞】

 

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