日本で初めてカジノを含む統合型リゾート(IR)の事業者候補が決まった。和歌山県が2021年6月2日に発表した、カナダのクレアベストグループ(Clairvest Group Inc.)だ。実はこの会社、本命でもなくカジノ事業者でもない。同社はどんな会社で、なぜ和歌山県のIR事業者候補に選ばれたのか?
選ばれたのはカジノ会社ではなくPEファンド
クレアベストグループはトロントに本社を置く、プライベート・エクイティ・マネジメント(PEファンド、未公開株投資運営)会社。北米でゲーム業界をはじめとする幅広い業界に投資、南米では20カ所以上のカジノ開発に参加している。
日本では2017年にクレアベスト・ニーム・ベンチャーズ(東京都品川区)を設立し、和歌山県のほか、北海道苫小牧市や長崎県佐世保市などでIR事業者に名乗りを上げていた。同社は1987年の設立で、25億カナダドル(約2270億円)超の資金を運用している。
PEファンドと言えば、運用資産が2000億米ドル(約21兆9000億円)規模の米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)や、アジア太平洋地区だけでも150億米ドル(約1兆6400億円、不動産投資を含む)を運用する米ブラックストーン・グループに比べると、かなり小ぶりなPEファンドだ。
事実、クレアベストグループは金融業界では中堅企業向けの投資会社とみられている。カジノの運営実績がないわけではないが、カジノ事業者と手を組み資金面で開発を支えるケースが多いという。
「本命」が突然撤退
そのため和歌山県も本命視していたのは、マカオのカジノ運営会社サンシティグループだった。しかし、5月12日に自社のホームページで「新型コロナウイルス感染拡大による業界への甚大な影響と日本のIR区域認定手続が当初予定よりも大幅に時間を要すると想定され、いまだに多くの事柄が不透明だ」として、IR事業からの撤退を表明した。同社が資金洗浄に関与した疑惑が発覚したためとの見方もある。
和歌山県は、ただ1社残ったクレアベストグループを選ぶしかない状況になった。しかし、1社単独では競争原理が働かず、しかも残ったのはカジノ専門業者でもない。仁坂吉伸和歌山県知事はサンシティグループの撤退を受けて誘致断念もほのめかしていたが、これまで多額の予算をつけて準備を進めてきただけにGOサインを出したようだ。
ただ、競合相手がいなくなっただけに、クレアベストグループが和歌山県との交渉で有利な立場になったのは事実。IR開発が県の思惑通りに進まなくなる懸念もある。さらにはコロナ禍前からカジノ業界は不振が続いており、カジノ専業ではないPEファンドのクレアベストグループが「他の投資に比べ、リターンが少ない」と撤退する可能性もゼロではない。
和歌山県にとってはまさに苦渋の選択。IR事業者候補が決まったとはいえ、今後も不透明な状況に変わりはなさそうだ。最終的にIR誘致を進めているのは和歌山県のほか、大阪府・市、横浜市、長崎県の計4カ所で、2022年4月までに国へ整備計画を提出する。国はこのうち最大3カ所を認可する方針だ。
M&A Online編集部
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