米国有数の観光地ラスベガスが新型コロナウイルスによる苦境を脱し、活況を取り戻しつつある。ネバダ州のカジノの売り上げは5月に早くも過去最高を更新したが、「完全復活」に向けては思わぬ壁も立ちはだかる。
深夜まで人波
最高気温が連日40度を超えるラスベガス。熱風を吸い込むと喉が焼けそうだ。そのため日中の人通りは少ない。日が沈むと様相は一変する。カジノを併設するホテルが集中し、ネオンがきらめく中心部ストリップ地区は深夜まで観光客でごった返す。ストリップは細長い土地を表す英語だ。マスクをしている人はほとんどいない。
深夜まで人の流れが途切れないラスベガスのストリップ地区(13日)
「ここにはエンターテインメントの全てがある。いつ来ても退屈しない」。同州北西部リノから車で数時間かけて訪れた連邦政府職員のリッキー・パーカさん(51)と妻のステイシー・リアリーさん(53)は頬を上気させた。
ラスベガスを訪れたのは4回目。新型コロナのパンデミック(世界的流行)後は初めてだという。「ワクチン接種を済ませたので人混みでも安心。カジノでは損を取り戻せて良かった」
V字回復
パンデミックでラスベガスは苦境に陥った。昨年3月中旬から6月上旬までカジノは閉鎖され、ストリップ地区のカジノの売り上げは激しく落ち込んだ。同州などの調査によると、同地区のホテルの稼働率も昨年4月は1%となり、ラスベガスの5月の失業率は全米の13%の2倍以上となる26・6%に達した。
同州で飲食業に従事する約6万人が加入する労働組合「キューリナリー・ユニオン」のジオコンダ・クライン書記長(66)は「私たちの仕事はカジノやショーに訪れる観光客がいなければ成り立たない。閉鎖中は組合員の9割以上が解雇された」と振り返る。
カジノは昨年6月以降、人数制限が設けられながら再開した。ワクチン接種が進んだ今年3月以降客足が伸び始め、同州のカジノの売り上げは5月、約12億3000万ドル(約1350億円)と過去最高を更新した。ストリップ地区の売り上げは、その半数超の約6億5500万ドルを占める。
同州は6月1日、全米でいち早くカジノの人数制限などの規制を撤廃し、経済活動を全面的に再開した。車での訪問が可能な距離からの観光客が増えており、6、7月はさらなる記録更新も期待される。
インド型 じわり増加
客足の急な回復でカジノやホテルの人手が追い付かない場面も出てきた。職場復帰に慎重な労働者が多いからだ。とりわけ中小の事業者は働き手の確保に苦戦する。
要因の一つに、バイデン政権の手厚い失業給付がある。給付額には9月上旬まで原則、週300ドルが上乗せされる。「家にいた方が収入がいい」――。約700のアジア系企業などが加入するラスベガス・アジア商工会議所には、元従業員からそう告げられたとの相談が相次ぐ。
キューリナリー・ユニオンでも、組合員の半数が元の職場に戻っていない。同商工会議所のソニー・ビヌヤ会頭(53)は「賃金の高い大手企業に人が流れ、個人経営のところでは人材の奪い合いも起きている」と明かす。
インド型(デルタ型)の変異ウイルスはここでも心配の種だ。ラスベガスのあるクラーク郡の1日あたりの新規感染者数は、7日平均で6月1日の100人から7月16日は550人に増加。同州の保健当局は同日、カジノを含む屋内の混雑した場所で、全員のマスク着用を呼びかけた。
2004年にラスベガスに移住したビヌヤ会頭は、真っ暗になったストリップ地区を初めて目にしてひどく落ち込んだ1年余り前を思い出す。「ウイルスが地上から消えることはない。我々は共存しながら前に進む」
【yomiuri】
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